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Honeymoon of golden witch 〜イタリア編〜その2

 ローマは他のどの都市にもない独特の異様さが印象的だ。それは何故ってーと、遺跡が街の中にナチュラルに溶け込んでいるから。遺跡の欠片がゴミみたいに街のあちらこちらの芝生に転がっていたり、二階ほどもある遺跡の上にホテルを増築していたりといったりしてやがる。なんでも、あまりにも遺跡が発掘されすぎるおかげで地下鉄工事が全然進まず、ローマを通る地下鉄は二本だけなんだとか。だから車が溢れかえり、二重路肩停車で道が狭くなったり、道のど真ん中で堂々と停車する車が現れてくるのだそうだ。
 喧しいクラクションがあちこちから聞こえてくる。ここでは観光バスが渋滞に巻き込れていた。ちなみに、他のイタリアの都市にはこういうことは無いらしい。
 広い道なのに横断歩道の青が7秒しか続かないなんてザラ。歩行者用の黄色信号がすぐに点灯し、俺たちはいそいそと渡ることになる。現地ガイドの人は「ダイジョウブデスヨー」と悠々と渡っていく。彼らは横断歩道がなくても、赤信号でも無理やり渡る。車はすぐスピードをゆるめてくれる。特にクラクションで怒られることもない。……こうしてみると、黄金郷って実はありふれた都市なのかもしれない。
 ベアトリーチェはデジカメであちこちを撮影していた。一枚取る度に、内容を確認して、気に入らなければ撮り直している。耳にはヘッドホン。彼女曰く、未来人ごっこらしい。しかし、服装は首元がすっきりした襟のない白いシャツに、肩に巻いたカーディガン。ピンク、青、黄色の3色で構成された、よくあるタイルの色分けクイズのみたいな不思議な幾何学的模様をあしらったスカートと、「ローマの休日」に出てきたヒロインのアン王女を思わせる古風なスタイル。スカートの丈は、「あんまり人前で肌を見せるんじゃない」と日頃から注意している俺の努力が実ったのか、膝よりちょっと下。
「未来の皆さん、こんにちは〜!黄金の魔女ベアトリーチェ、千歳だけに繊細です☆」
「え?!何それ?打ち合わせなしにそういうことするの、マジ辞めてくんない!?」
「未来はアイドル全盛だと聞いたのでな……。ちょっと流行に合わせて名乗りを上げてみたまでよ」
「あー、そうなんだ……誰に聞いたの?」
「今日はァー、皆さんにお願いがあります☆今、夏海ケイって漫画家が出してる『うみねこのなく頃に EP8』ってコミックスが……」
「おい!なんで続けるんだよ!段取り守れ!」
「えー、大事な話なのにィ〜〜」
「スケジュール詰まってるんだから、あんまり余計なことすんな。予習してきた?こういうのは基本的に勉強しないと退屈だぞ」
「したした。それよりも妾のお師匠様の17歳ネタに絡めたセンス、どう?ってか、お師匠様スゲーな、時代先取りだったんだな。普遍性があるから廃れないのかな」
「あと、今はいいけど、コロッセオの近くになったらあんま写真撮らない方がいいぞ。なんか、写真に自分が写ったんだから金よこせとか言われるらしいから」
「そうなんだ。じゃあ、家にある角材みたいな、あの置物ひきとってもらおうぜェ〜。邪魔で邪魔でしょうがないし」
「まーたそういう……。俺は知らない土地なんだから少し注意しろって言ってるだけよ?」
「はいはい、戦人。このタイミングでテストでーす!765プロのメンバー13人言って」
 来た。最近は何かって言うとこのクイズが始まる。読んでる人には悪いが、後で説明するのでこのまま続けさせてもらおう。
「えーっと、星井美希。如月千早。四条貴音。双海亜美。双海真美。えーっと……沖縄の……我那覇響。菊地真」
 俺は指を折って数を数える。現在7人。
「そうだ。うーうーじゃなくてうっうーの……やよい。高槻やよい。天海春香」
 ボブヘアーの髪型は二人いた。リボンが付いている方が天海春香。ついてない方は……なんだっけ。名前を忘れてしまった。
とりあえず、現在9人。覚えているところから行こう。
「あれ……?あれ、なんだっけ……なんか……剣豪みたいな名前のヤツいたよな?」
「くすくす。剣豪とかー。たしかに、昔は男性の名前だったけど、現代では女性の名前としても使われるよなァ……」
 ベアトリーチェは笑いながら余裕の表情。
「そうだ、伊織だ。水瀬伊織。萩原雪歩。三浦あずさ、律子。…………あれ律子の苗字なんだっけ?」
 思い出せない。何故だ。前にテストされた時もこのキャラの苗字を忘れていたとか、そんなことばかり思い出す。
「ヒント。ヒントくれ」
「は。戦人のくせに。『ヒントくださいベアトリーチェ様』って言えよ」
「…………………………………………。ダメだ、思い出せない。リザインします………………」
「えー、もうちょっと頑張れよォ〜」
「いや、こういうのは考えてどうこうなるもんでもないし……思い出せないのはしょうがない」
「じゃあ、ヒント。今の季節に関係があります」
「え、秋?……秋月律子?」
「ピンポーン♪」
 そう、最近は事あるごとにこのクイズをさせられる。まさか、黄金郷の領主になってまで、暗記で苦しむことになるとは思っていなかった。最近、ベアトリーチェは真里亞の影響で、「アイドルマスター」というが好きになってみたいだ。なんでも、縁寿に呼び出された真里亞が未来で見てきたアニメがとても面白かったらしい。アニメのヒロインなのか、と思いきや、元はビデオゲームで、プレイヤーはアイドル自身でなく、アイドルを育てるプロデューサーという職業で、彼女たちをトップスターに育てることを競うらしい。楽曲を選ぶ、3人組のアイドルの誰を選ぶかも任意、ラジオ番組やCDまで発売し、それぞれのアイドルのグッツも発売されているとか。……ここまで来ると実際のアイドルと変わらない。生きているのと同じだ。それはイラストレーターが描いた絵を元に作られたアニメやゲームのデータで、声優が吹き込んだ声で、脚本家が考えた言葉であったとしても。むしろ、怪我や病気、スキャンダル、加齢の心配がないと100%保証されている訳だから、現実のタレントよりも、より偶像という言葉がより当てはまる。
 知的な王子様でお馴染みの俺だが、自分からアイドルに興味をもった訳ではないことをお伝えしたい。これは、妹の縁寿と、妻のベアトリーチェに打ち解けてもらうための打算的行動である。真里亞は縁寿の魔女の師匠だ。そして、真里亞はベアトリーチェの親友にして弟子である。そして、その真里亞が好きなものに、二人とも興味が有るのだ。ここに乗っからない手はない。欲を言うなら、縁寿に俺は、俺たち二人の仲を認めて欲しいと思っている。
 ……しかし、真里亞やベアトリーチェの話を聞く限り、未来ではアイドルの追っかけが市民権を得ているようで驚く。これは、実在するタレントとしてのアイドルグループの話だそうだが、未来では人気投票の順位をテレビで何時間にも渡り中継するのだそうだ。スポーツの観戦かよ。ベアトリーチェから未来のことについて教わることになるとは思っていなかった。……実在するタレントも、ゲームやアニメの登場人物も同じ次元で人々から憧れを抱かれる対象になっているという。なんだかそれって、…………。いや、言わないでおこう。
 コロッセオを横切る。話に夢中で気がついたら素通りしていた。何だかんだ、覚えることが色々あるらしいけど、思えば推理小説だって登場人物の顔と名前を覚えることから始まる。大丈夫、俺はきっとやり切れる。 
 俺達はサンタ・マリア・イン・コスメディン教会にやってきた。イタリアのローマにある聖堂であり、最初、古代ローマの廃墟を利用し、東方の聖像破壊運動の迫害から逃れてきたギリシャ人にあたえられた。コスメディンは、化粧を指すコスメと同じく、ギリシャ語で「装飾」を意味する。
 生きた知識でなくて申し訳ない。俺も、このために勉強したのだ。ちなみに、中の様子は……。
「……なんか、暗くてよく判んなかった……」
「う〜ん、確かにそうだな……サン・ピエトロ寺院のほうに期待するか……。しかし、どこもかしこも教会ばっかだな〜。日本で言うなら、京都みたいなもんなのかな、どっちも古い都だし。そんなもんか」
 お祖母様へ手紙を渡すのに相応しい場所を求めて、教会を幾つかピックアップしていたが、この調子だと有名なところはどこもかしも観光地で、そんな雰囲気は無かったりするのだろうか。反魂の魔女の力を持ってしても、生前を知らない人とは会話は不可能だ。この古い都の、それこそ、霊験あらたかな力に期待するしか無い。元々気休めみたいなものだから、極論を言えば、落ち着いてお祈りが出来る所ならどこでもいいのだから。
 ちなみに、記念切手も見ているのだが、事前に調べた情報だと、おっさんや建物の絵柄ばっかりで、うちの魔女様のお気に召す内容ではなさそうなものばかり。こちらも今後に期待しよう。
 サンタ・マリア・イン・コスメディン教会には「ローマの休日」にも登場した真実の口がある。水の神トリトーンの顔。転じてマンホールなんだとか。他のところにも似たものがあった。口の中に手を入れて、嘘つきだったら手を引きちぎられるらしいが、なんだか俺たちにとって、これほど白々しいイベントも無いと思う。ベアトリーチェは目に手を突っ込んでいた。殺人事件が起こったら、凶器を捨てられるか、口からでも目からでも同じ出口になるのか知りたかったらしい。推理小説では、井戸は凶器を捨てる場所としてよく使われるから、その連想なのだろうけど。
 トレビの泉。泉に背を向けて右手で左の肩越しにコインを投げると枚数に応じた願いが叶うらしい。1枚だとまたローマに来ることができる。2枚だと幸せになれる。3枚だと離婚できる。4枚だと、ローマに住める。とのこと。周りの建物が大きいせいか思ったより大きくは見えなかった。……結果があまり良くなかったので、この記述から内容を察して欲しい。
 疲れと空腹でベアトリーチェの機嫌が若干悪くなってきたので、近くにあったジェラート屋で機嫌をとった。ベアトはアイスクリームに関しては白(バニラ?ミルク?)一択。今回も例外なく白いヤツを頼んでいた。俺はお店の人に薦められるまま、ピスタチオ味。で、いつも、俺に一口よこせと要求してくる。
 その後、泉から歩いてすぐの所にあるスペイン広場へ。
 夜はローマ市内のレストランで夕食を食べた。観光客ばっかりだから、あまり美味しくないと言うことだったけど、舌がバカな俺にはよく判らなかった。カップルで食事をするときには、横一列の方がいいなんて言うけど、俺は断然対面式。恋人の表情を見ながら会話をしたいから。昼間の彼女も快活で好きだけど、やはりベアトリーチェは夜のほうがそれらしい。この季節の飾りは魔女にとっては支配する眷属や力を貸してくれる友人たちでしかない。
 小ぶりのシャンパンのボトルを1本注文して、旅の成功を祈った。テーブルの蝋燭がオレンジ色に揺らめき、彼女の表情を知らせてくれる。話している内容は昼間とほとんど変わらない、最近面白かった芸術作品や友人の話。彼女の子供の頃の夢の話。白いブラウスから覗く鎖骨が色っぽい。そのまま胸元に視線が落ちていってしまう……。ワイングラスの持ち方も随分様になっている。いつもと違う服装のせいか、大人びて見えた。彼女に見とれていると話をちゃんと聞いているのかと言われてしまうけど、その美しさに目を奪われないのもまた、罪なのではないかと思ってしまう。
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