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Honeymoon of golden witch 〜イタリア編〜その4【完】

翌朝、目が覚めるとベアトリーチェはすでに着替えてベランダで外の景色を眺めていた。まだ朝食にも早い時間だったけれど、俺は彼女を誘って、外に連れだした。今日の日程が始まる前に、行っておきたいところがあったのだ。ベアトは身支度に時間が掛かるタイプなので、彼女が気まぐれを起こして早起きしているのはありがたかった。
 まだ町は今日の一日が始まるまでの準備中で、開いている店はほとんど無かった。営業を始めているのは太陽くらいのもの。     ホテルから歩いて10分足らずの所に目的地はあった。イタリアではありふれていて、特にローマでは至る所にあるランドマーク。俺は鍵を入れて扉を解錠する。重い音と共に扉が開くと、太陽の光を受けて、ステンドグラスから七色の光が地面に落ちている。それほど広い場所ではないので、少し歩いただけで建物の最奥部に辿り着いた。同じ構造の建物には必ずこの場所にこれがある。名前を調べたら、主祭壇というらしい。一つ勉強になった。
「長い間待たせてごめんなさい。俺と結婚して下さい!」
 俺はズボンの後ろポケットから小箱を出して、ベアトリーチェの前で開けて見せた。彼女の誕生石のトパーズの入った指輪をこの旅行中に渡そうと用意しておいたのだ。
「これ、断ったらどうするんだよ……いままでの件全部なしになるけど……?」
「そういうことだ。ハイかイエスでお返事してくださいってヤツだな」
「どうしよっかなァ〜、別に指輪持ってるから、何個もあっても邪魔なだけだしィ〜」
「プロポーズが嫌なら、ちょっと早めの誕生日プレゼントでもいいぜ。……それとも、新作ゲームのほうが良かったかよ。花より団子ならぬ、花よりミステリーってか?」
 そう言いつつも、ベアトリーチェは指輪に指を通して、太陽に透かして眺めている。その温かい眼差しは、昨日の行為を思い出す。この笑顔を見るたびに、俺は何度でも、言葉を失って無力になってしまうと思う。
「妾も、一途じゃなくてごめんね。…………でも、戦人が手紙の一通でもくれれば一途で居られた。やっぱり戦人が悪い!」
「……ああ、まったく、お前の言うとおりだ。俺は最悪の男だよ。まあ、その。なんていうか。…………茶番だって判ってるけど、今から、やり直したいんだ。普通の恋人がやること、全部」
 俺は歯切れの悪い言い方でそういう事しか出来なかった。言い訳がましいくてダサいと自分でも思うけど、幸せそうなベアトの笑顔の前では俺は単なる背景でしかない。主役は常に、彼女なのだ。
「妾いいこと思いついちゃった! 指輪いらないから縁寿にあげよう。アイツにぴったりじゃん。これでドブスでも彼氏できるだろ」
「おい、人の妹だぞ、何言ってんだよお前、しまいにゃ怒るぞ。ブサイクまでにしなさい。ドブスはやりすぎ!」
「は?戦人だってアイツの事ブスだって思ってるってことだろォ」
「思ってねーよ!縁寿は天使みたいにカワイイって!それにこれ、お前の誕生石じゃん。縁寿は6月産まれだから、明らかにそれ用に用意したんじゃないってバレるって……」
「そんなことはないぞ。説明書を読んでみるがいい」
 俺は小箱の中を開け、小さく折りたたんである紙を探した。そこには11月の誕生石であるトパーズの説明が書いてある。 

 “トパーズは誠実という石言葉を持ち、勇気を持って未来に進む為のサポートをする石と言われます。トパーズ全般で最も特徴的な特性としては持ち主にとって必要なものと出会わせてくれる石であると言う事です。探し物に会えると言っても良いかもしれません。仕事、恋愛、人の縁など自分が望むもの、自分にとって必要なものをトパーズは見つけやすくしてくれるのです。
直観力と洞察力を高め、曖昧な物事をはっきりさせることで、目の前のもやっとしたものが晴れていき、自分が本当に何を必要としているのか、何を見るべきなのかが分かってくる、そういうサポートをしてくれる石と言えます。そしてトパーズは、欝蒼とした状態を払い、未来に対して希望をもたらしてくれます”

「なるほど。まぁ、確かに、メッセージとしては悪くないかもな……」
「うんうん。ってか、話戻るけど、縁寿のファンって縁寿がカワイイからファンな訳じゃねーだろォ……。やっぱり、未来にはまたちょくちょく行きたい!新しいミステリーも出てるし……。その為には、反魂の魔女の力が必要だし、たまには兄嫁として、機嫌をとっておかないと……」
「そう、そういう感じで言えや。デブとかホントに辞めろって」
「妾はブスとしか言ってませーん☆戦人は縁寿のことデブって思ってるんだー、ふーん……」
「ち、ちげーよ!お前がいつも言ってるから、間違えちゃっただけだし!?縁寿、ベアトもお前と似たような体型だからさ、気にすんなよ……」
「違う、違う、全然違う〜!妾のふとももはムチムチしててちょっとエッチな感じだけど、縁寿の足は蹴られたら死にますゥ〜☆」
「めんどくさい結果になるの目に見えてるような……。どうせ、後処理するの俺なんだから、俺一人で行こうかな……。言葉を選んで、先方の心象を良くしないとダメだぞ」
「上手く言うのは大丈夫。妾そういうの得意!逆転シリーズの新しいヤツも出たって言うし、早く呼び出し無いかなァ~」
 俺達がそう話をしていると、扉が開く音がした。
「戦人、誰か来たぞ。隠れよう」
 ベアトリーチェが俺の手を引く。小箱は机の上に置いたまま。そのまま奥に入って隠れた。別に隠れる必要あんのか?と思ったけど、再び扉の開閉の音がした。それを確認してからそこから出ることにした。
「あ、そうそう。話、途中になっちゃったけど、妾は縁寿の付き人のあのピザ屋みたいな帽子かぶってる人に彼氏になってもらえばいいと思うぞ!あの人、結構、顔もカッコイイし」
「えー!ダメだよダメ。絶対ダメ。あんな不真面目で軽薄そうなヤツ、絶対ダメだから」
「そうか?話も結構弾んでるみたいだし、仲が良さそうに見えるがな……?」
「……別に、俺だって縁寿にいい人居たほうがいいと思うよ。別に、もう6歳じゃないんだから、不純異性交友するなとか言わないよ?それが真面目でちゃんとしてる人なら。アイツは大丈夫なの!?」
「もう、長い時間ずいぶん付き合いがあるみたいだし。縁寿のカネが目当てだったらとっくに相手にしていないであろうな。……というか、戦人、あの人に嫉妬してるだけじゃねーのォ〜?女のヤキモチは可愛いけど、男の嫉妬は見苦しいぞ……?」
「は?嫉妬じゃねーよ。俺は縁寿の心配をしてるだけだから!」
「じゃあ、こういうのは?あの人ちょっと戦人に似てるし……」
「似てねーよ!外見、性格、話し方、生い立ち、一切似てません!」
「えー、金蔵はそれでイチコロだったのになァ〜」
「うるせーよ。こういうのとか言ってる次点でダメだから」
 軽口を叩きつつも、ベアトが縁寿の事を気にかけている事に動揺を隠せない俺である。結構気の利いた嫁じゃないか。そして、俺は縁寿のことをまだ子ども扱いしてたのかよ……。この一連の流れで、それがハッキリしてしまった。子ども扱いは改めようと思うけど、やっぱり縁寿には真面目な人と付き合って欲しいと思う……。 
 まだまだ旅行の日程は残っているけど、伝えるべきことは伝えたと思うからここで筆を置くことにする。物語として、読む価値のあるエッセンスも俺なりに抽出したつもりだ。じゃあな、シーユーアゲイン。必要だったら、いつでも呼んでくれ。でも、嫁と旅行している間は、出来れば勘弁。なんてな、いっひっひひ。

Honeymoon of golden witch 本編 完
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